時代は変わり、他の職業と同様、看護師の世界においても転職が普通になりつつある点は良い傾向ですね。今までは何か違和感を感じても、耐えるか、あるいは辞めるかしかなかったところ、そこに「職場を変える」という選択肢が出てきたのです。貴重な人生の貴重な時間を費やすわけですから、やはり、納得ができ、やりがいが感じられ、「ありがとう」という言葉が聞ける職場で働きたいものです。
前回のコラムでご案内したように、アブラハム・マズローという米国の心理学者が述べている人間の5つの欲求があります。人間ならだれもが持っている基本的な欲求です。どの欲求が活性化して行動を引き出すかは、その人のそのときの状況によって左右されます。 患者さんも間違いなくこうした種類の欲求を持っています。彼らの心理的状況を考えてみると、まず忘れてならないのは、患者さんは病気にかかって病院に来ている弱者だということです。 もちろん日常生活が普通にできる人もいれば、身体が弱って自由にならない人もいます。しかし共通しているのは、病気にかかって不安を抱えている人たちだということです。つまり下位欲求の心理的安全が脅かされているのです。 この患者さんの抱く不安を分析してみると、治療の結果についての不安と治療過程にかんする不安の2つに区分できます。 不安というのは未来に起こることが不確定であることから生まれるわけですが、治療という観点から見れば、治療の結果がわからないという不安と、治療の過程がどうなるのかわからないという不安、つまり治療はどれほど続くのか、いつ回復するか、といったことと加えて、我慢しなくてはならない苦痛や副作用などについての不安です。 治療の結果については純粋に医学的な見通しが関係するために、看護師が単独で対応することはできません。 できることは、医師の見通しをそのまま繰り返して患者さんに伝えることぐらいでしょう。 もちろん、このことも患者さんの不安を低減するためには必要なことです。患者さんは事実と違った観測(たとえば悲観的観測)を抱きやすいので、医師の予後についての見立てを繰り返すことで、その時点での事実を理解してもらうことになります。 しかし治療の過程にかんする不安については、これまでの経験から治療過程の内容を知っている看護師は、患者さんに対して患者さんの身になった説明をすることができます。 その場合、理由なく甘い見通しを伝えることは避けねばなりません。看護師が見聞きし、経験している範囲の事実をそのまま伝えるべきです。 たとえそれが、患者さんにとってかなりきついものであっても、情報を与えることで、過程についての不安はそれなりに減少するからです。 最近は、終末医療(ターミナルケア)のあリ方や遺言、エンディングノートなどについての議論が盛んになってきています。 人々が「どう生きるか」だけでなく、どのように自分の一生を終えるか、についても関心を抱き始めたからです。つまり、自己実現の欲求をみたすためには、生き方だけでなく自分の一生の終え方についても考える必要が出てきていることを示しています。 従来の医療は、病気を治療することを目標にしてきました。だから回復の可能性のない患者さんに対しても、症状が存在するかぎり治療を行ってきました。それがスパゲティ症候群といった、生命維持装置のチューブをたくさん身体に付けられて亡くなっていく患者さんを生んできたのです。 しかし現在では、死についての自己実現が社会的に問題にされるようになり、厚生労働省も「終末医療についての決定プロセスについてのガイドライン」を発表しています。 また、こうした傾向が今後、在宅医療や自宅での看取りなどにかんする看護師の仕事を拡大することにつながっていきます。 看護師も、患者さんの死をめぐる自己実現の問題と無縁ではなくなってきているのです。 参考になさってください。 看護師・ナースの方が転職したい!と思ったら。 >>>看護師転職・ナース転職サイト比較ランキング
前回のコラムでご案内したように、アブラハム・マズローという米国の心理学者が述べている人間の5つの欲求があります。人間ならだれもが持っている基本的な欲求です。どの欲求が活性化して行動を引き出すかは、その人のそのときの状況によって左右されます。
患者さんも間違いなくこうした種類の欲求を持っています。彼らの心理的状況を考えてみると、まず忘れてならないのは、患者さんは病気にかかって病院に来ている弱者だということです。
もちろん日常生活が普通にできる人もいれば、身体が弱って自由にならない人もいます。しかし共通しているのは、病気にかかって不安を抱えている人たちだということです。つまり下位欲求の心理的安全が脅かされているのです。
この患者さんの抱く不安を分析してみると、治療の結果についての不安と治療過程にかんする不安の2つに区分できます。
不安というのは未来に起こることが不確定であることから生まれるわけですが、治療という観点から見れば、治療の結果がわからないという不安と、治療の過程がどうなるのかわからないという不安、つまり治療はどれほど続くのか、いつ回復するか、といったことと加えて、我慢しなくてはならない苦痛や副作用などについての不安です。
治療の結果については純粋に医学的な見通しが関係するために、看護師が単独で対応することはできません。
できることは、医師の見通しをそのまま繰り返して患者さんに伝えることぐらいでしょう。
もちろん、このことも患者さんの不安を低減するためには必要なことです。患者さんは事実と違った観測(たとえば悲観的観測)を抱きやすいので、医師の予後についての見立てを繰り返すことで、その時点での事実を理解してもらうことになります。
しかし治療の過程にかんする不安については、これまでの経験から治療過程の内容を知っている看護師は、患者さんに対して患者さんの身になった説明をすることができます。
その場合、理由なく甘い見通しを伝えることは避けねばなりません。看護師が見聞きし、経験している範囲の事実をそのまま伝えるべきです。
たとえそれが、患者さんにとってかなりきついものであっても、情報を与えることで、過程についての不安はそれなりに減少するからです。
最近は、終末医療(ターミナルケア)のあリ方や遺言、エンディングノートなどについての議論が盛んになってきています。
人々が「どう生きるか」だけでなく、どのように自分の一生を終えるか、についても関心を抱き始めたからです。つまり、自己実現の欲求をみたすためには、生き方だけでなく自分の一生の終え方についても考える必要が出てきていることを示しています。
従来の医療は、病気を治療することを目標にしてきました。だから回復の可能性のない患者さんに対しても、症状が存在するかぎり治療を行ってきました。それがスパゲティ症候群といった、生命維持装置のチューブをたくさん身体に付けられて亡くなっていく患者さんを生んできたのです。
しかし現在では、死についての自己実現が社会的に問題にされるようになり、厚生労働省も「終末医療についての決定プロセスについてのガイドライン」を発表しています。
また、こうした傾向が今後、在宅医療や自宅での看取りなどにかんする看護師の仕事を拡大することにつながっていきます。
看護師も、患者さんの死をめぐる自己実現の問題と無縁ではなくなってきているのです。
参考になさってください。
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