時代は変わり、他の職業と同様、看護師の世界においても転職が普通になりつつある点は良い傾向ですね。今までは何か違和感を感じても、耐えるか、あるいは辞めるかしかなかったところ、そこに「職場を変える」という選択肢が出てきたのです。貴重な人生の貴重な時間を費やすわけですから、やはり、納得ができ、やりがいが感じられ、「ありがとう」という言葉が聞ける職場で働きたいものです。
私が看護部長をしていたころ、スタッフたちが「師長元気で留守がいい!」と言っていると師長から聞きました。 なるほどこの言葉は、「亭主元気で留守がいい」をもじっているわけですから、「うるさい師長が留守の日はのびのびと働ける。だけど、師長は元気で働いて、師長としてやることはもちろんちゃんとやってね」というスタッフの声なのです。 実に看護管理の本質を言い当てた言葉だと思い、私は感心しました。 そして、30年前の私も、やはり「婦長元気で留守がいい!」と思っていたことを思い出しました。 実は、「師長元気で留守がいい」には続きがあって、「・・・けれど、ここぞという時には師長や主任にいてほしい」のです。ここまではっきり言ってくれると、実にスタッフの本音が出ています。 「うるさいことは言わないでほしいけれど、ここぞという時には頼りにしたい」ということです。 スタッフは師長に対しては、 「師長でなければできないことをしてほしい」、主任に対しては、「主任でなければできないことをしてほしい」と思っているわけです。日常業務でも期待はあるのですが、緊急な事態や特別な事態(例えば、事故やトラブル、苦情の発生時など)では、なおさら師長や主任への期待が大きくなりますから、ここぞという時には日頃煙たい師長でも助けてさえくれれば、「ああ、やっぱり師長だな」「ああ、やっぱり主任だな」と頼もしく思われるわけです。 スタッフのそんな思いは、昔スタッフだった師長や主任もよくよく知っていますから、自分はスタッフからの期待に応えているだろうかととても気になってしまいます(これは、自分がスタッフの時、主任や師長に大きな期待を抱いていた人ほど、そしてそのことに不満を持っていた人ほど、自分は期待に応えられているかとても気になっているようです)。無論、師長や主任もそうしたいと思っているのですが、スタッフの期待ばかりに応えているわけにはいかない事情もあり、葛藤します。 いい師長でありたいと思う人ほど、いい主任でありたいと思う人ほど葛藤します。 そして、周囲の期待に応えれば応えるほど、さらに期待され、期待はどんどんどんどんエスカレー卜し、スタッフからも、上司からも、医師からも、他職種からも、それに患者・家族からもますます期待をかけられているように感じ、押しつぶされそうになって、「冗談じゃない!いい加減にして!」と叫びたくなることがあります。 奮闘している時でも、「師長だから、主任だから当たり前」とされ、黙って働く「背中」を本当に部下や上司は見てくれているのか、そんな思いすら浮かんでくることもあるでしょう。誰も自分の大変さを理解してくれていないのではないかと、孤立感にさいなまれます。 ほかの人はうまくやっているのに、どうして自分だけは割を食ってしまうんだろうと小さな不満が蓄積されます。この不満のぶつけようがなく、ただこのまま擦り減っていくような気がして不安になります。 「そう言えば、スタッフだった時はみんなで、ワイワイやっていたのに、主任になったらスタッフが煙たがっているような気がする。私だって好きで、主任になったんじゃないわ。だけど、主任なら主任として言わなきゃならないこともあるのよ。もうみんな、大変な時だけ頼りにするくせして、私の言うことなんて聞いてくれないじゃない!何で私だけがこんな思いしなくちゃならないの!私だってもっと余裕を持って、ニコニコして仕事したいのに。ひどいじゃない」なんて、ちょっと被害妄想的になってはいませんか。 心配する必要はありません。きっと、あなたの「背中」はちゃんと見られています。ただ、その背中が何を物語っているか、今すぐにはわからないだけなのです。その背中が何を表現しているのかわかる時がきっと来ます。 しかし主任や師長が自分たちの役割を勘違いしていると、スタッフにはなかなかその仕事が伝わりません。ここでは、そもそも主任や師長の役割というのは何なのか、そして現場のスタッフが楽しく働けるためにはどのような役割を果たせばよいのかについてお話ししましょう。 主に主任を中心に話をしますが、スタッフが主任や師長の役割を知っておくことは重要なことですので、スタッフの皆さんにも読んでいただければと思います。 (続く) 参考になさってください。 (福祉系大学准教授) 看護師の方が転職したい!と思ったら。 >>>最新の看護師転職・ナース転職サイト比較ランキングはこちら
私が看護部長をしていたころ、スタッフたちが「師長元気で留守がいい!」と言っていると師長から聞きました。
なるほどこの言葉は、「亭主元気で留守がいい」をもじっているわけですから、「うるさい師長が留守の日はのびのびと働ける。だけど、師長は元気で働いて、師長としてやることはもちろんちゃんとやってね」というスタッフの声なのです。
実に看護管理の本質を言い当てた言葉だと思い、私は感心しました。
そして、30年前の私も、やはり「婦長元気で留守がいい!」と思っていたことを思い出しました。
実は、「師長元気で留守がいい」には続きがあって、「・・・けれど、ここぞという時には師長や主任にいてほしい」のです。ここまではっきり言ってくれると、実にスタッフの本音が出ています。
「うるさいことは言わないでほしいけれど、ここぞという時には頼りにしたい」ということです。
スタッフは師長に対しては、 「師長でなければできないことをしてほしい」、主任に対しては、「主任でなければできないことをしてほしい」と思っているわけです。日常業務でも期待はあるのですが、緊急な事態や特別な事態(例えば、事故やトラブル、苦情の発生時など)では、なおさら師長や主任への期待が大きくなりますから、ここぞという時には日頃煙たい師長でも助けてさえくれれば、「ああ、やっぱり師長だな」「ああ、やっぱり主任だな」と頼もしく思われるわけです。
スタッフのそんな思いは、昔スタッフだった師長や主任もよくよく知っていますから、自分はスタッフからの期待に応えているだろうかととても気になってしまいます(これは、自分がスタッフの時、主任や師長に大きな期待を抱いていた人ほど、そしてそのことに不満を持っていた人ほど、自分は期待に応えられているかとても気になっているようです)。無論、師長や主任もそうしたいと思っているのですが、スタッフの期待ばかりに応えているわけにはいかない事情もあり、葛藤します。
いい師長でありたいと思う人ほど、いい主任でありたいと思う人ほど葛藤します。
そして、周囲の期待に応えれば応えるほど、さらに期待され、期待はどんどんどんどんエスカレー卜し、スタッフからも、上司からも、医師からも、他職種からも、それに患者・家族からもますます期待をかけられているように感じ、押しつぶされそうになって、「冗談じゃない!いい加減にして!」と叫びたくなることがあります。
奮闘している時でも、「師長だから、主任だから当たり前」とされ、黙って働く「背中」を本当に部下や上司は見てくれているのか、そんな思いすら浮かんでくることもあるでしょう。誰も自分の大変さを理解してくれていないのではないかと、孤立感にさいなまれます。
ほかの人はうまくやっているのに、どうして自分だけは割を食ってしまうんだろうと小さな不満が蓄積されます。この不満のぶつけようがなく、ただこのまま擦り減っていくような気がして不安になります。
「そう言えば、スタッフだった時はみんなで、ワイワイやっていたのに、主任になったらスタッフが煙たがっているような気がする。私だって好きで、主任になったんじゃないわ。だけど、主任なら主任として言わなきゃならないこともあるのよ。もうみんな、大変な時だけ頼りにするくせして、私の言うことなんて聞いてくれないじゃない!何で私だけがこんな思いしなくちゃならないの!私だってもっと余裕を持って、ニコニコして仕事したいのに。ひどいじゃない」なんて、ちょっと被害妄想的になってはいませんか。
心配する必要はありません。きっと、あなたの「背中」はちゃんと見られています。ただ、その背中が何を物語っているか、今すぐにはわからないだけなのです。その背中が何を表現しているのかわかる時がきっと来ます。
しかし主任や師長が自分たちの役割を勘違いしていると、スタッフにはなかなかその仕事が伝わりません。ここでは、そもそも主任や師長の役割というのは何なのか、そして現場のスタッフが楽しく働けるためにはどのような役割を果たせばよいのかについてお話ししましょう。
主に主任を中心に話をしますが、スタッフが主任や師長の役割を知っておくことは重要なことですので、スタッフの皆さんにも読んでいただければと思います。
(続く)
参考になさってください。
(福祉系大学准教授)
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